azumur

2017.07.13
テキスト:柊明音

わたしはロランス/反乱ではなく革命

 『わたしはロランス』という映画で、主人公であるロランスが意を決して女装し、先生として勤務する学校の教室の扉を開けるシーンがある。お気に入りのシーンの一つだ。このときのロランスの心境は計り知れないほどのものであろう。今まで普通の男性を演じて生きてきて、女子からは素敵とまで評されるような先生が化粧をし、スカートやハイヒールを纏い、生徒たちが待ち構えている教室へ向かうのだから……。

 最初は生徒たちも戸惑いを隠せず、しばしの静寂が流れる。沈黙を破ったのは生徒の一人。手をあげて、何事もなかったかのように授業に関する質問をする。授業を終え、昼ご飯を食べに食堂へ足を運ぶロランス。廊下で戯れる他の生徒たちから形容しがたい視線を向けられても挫けることなく、ロランスはただただ歩んでいく。普段通り生徒たちに挨拶することも忘れずに。

 とくにお気に入りなのが、ロランスの良き理解者である同僚との会話のシーン。「反乱か?」と尋ねられて「いいえ陛下、革命です」と耳元でささやくロランス。なんて素敵なのだろう。音楽に合わせてこちらの胸まで高鳴っていく。他にもたくさんの好きな場面があるが、これが脳裏に浮かんだのにはワケがある。

 時刻は夜中の一時。私は衝動に駆られるかのようにブリーチをして洗い流し、マニックパニックのヴァンパイア・レッドで真っ赤に染めた。眉毛から何からすべて剃り落としていく。それなりの信念もあるわけだが、なんとなくそういう気分だった。

 久々に見た赤髪に微笑を浮かべる。もう二度と出会すことがないとすら思っていた自分と再会したことに喜びを隠せない。当然ながらプライベートでは全く他者の視線は気にならない。以前の職場においてもありのままの自分を温かく迎え入れてくれたわけだが、今回は事情が異なってくる。

 七時間後は職場に向かっている頃だ。おそらく周囲は驚きを隠せないであろうし、もしかしたら強い嫌悪感に似たものを抱かれるかもしれない。仮にそうなったとしても、最初からどう思われてもいいと覚悟した上での選択なので悔いはない。

 反乱ではなく革命を起こす時期が、新たな職場でも訪れた。ただそれだけのこと。

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